昔の鈴木敏夫のインタビューを発掘

藤巻 LINEの質問で「鈴木さんが『君の名は。』をどう考えているか知りたい」。

鈴木 非常に興味深い映画でしたね。というのは、東宝の宣伝プロデューサーが、「映画の公開前に見てほしい、一言ほしいんだ」と。
なぜかというと8月最終週の公開で、彼がすごく不安がっていて、それで僕は見てみたんですよ。
見た直後、彼に連絡して「大丈夫だよ。これは絶対にヒットする」と。内容について彼にいろいろ聞かれたので率直に答えました。
いろんな物語があって、多くの物語が、映画に限らず小説でもなんでもそうですけど、この世があってあの世に行くっていう話はけっこう
多いんですね。あの世に行ってそこで体験したことをもとに現実に戻ってくる。これが多いんですよ。その典型は宮崎駿でいうと『千と
千尋の神隠し』。
だけどこの『君の名は。』に関して言うと、僕は見て「へぇ」と思ったのは1つは絵もあるけれど、セリフ。「あの世」ということが非常
に効果的に使われている。あの世あの世って。
僕は正確に数えたわけじゃないけど、「一体あの世という言葉は何回使われるんだろう?」と。僕の今の感じでいうと20回ぐらい言って
るんですよ。それで「此岸(しがん)」という言葉を言ってるんですよ。此岸というのはこっちの世界なんですけど。
あの世あの世と言っておいて、それで実は新海さんという人は背景を本当に自分でも全面的にやったし、なおかつ物語のセリフも音楽も、
それからキャラクターの芝居も、すべてその背景が目立つように作ってあるという、実に珍しい話だと思ったんですよ。
それで見ていた時におもしろかったのは、あの世があって、むしろ時間と空間を歪めることができる。そういうこというと3・11をなくす
ことができる、なんてことをやっているわけでしょ。すごい映画だなと思いましたよね。もう1つ思ったのは、宮崎駿の影響をものすごく受け
ているなと思いました。