かつて、世界を変えたアニメがあった。
 十年が経ち、あのころの記憶も掠れ、他人事のように消費されていったものがあった。

『はやり廃りが娯楽の常。
 昨日まで面白かったものが、明日にはなんだか微妙なものになっている。
 楽しかったけどやりすぎて飽きてしまった。よく考えれば、こんなの時代遅れだよね―――
 こんな感じで、娯楽には鮮度がある。
 いつまでも頂点に有り続ける娯楽はない。
 娯楽自体は何一つ変わらずとも、消費する方の気持ちが変わっていく。
 娯楽はその在り方を一途に守り続けるのに、変化を続ける生き物には、その誠実さを評価できない』

 いつか、そうやって“確か”だった思い出も薄れていく。
 あのころの熱狂も、焦燥も、愛憎も、ただのまやかしだったのではないかと言い聞かせるように納得して老けていく。

 だが。
 そんな不誠実な心を打ち砕くように、不死鳥は灰になってなお蘇った。

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

 この怪物を覚えておけ。
 かつて、どころの話ではない。
 この作品には確かに世界を変える力があった。
 そして今も、変えていく力がある。
 あの頃のまま、いや数倍もの牙をもって、容赦なく蹂躙する力が。
 少しでも興味がある者、かつての思い出を残す人は映画館で観るべきだ。
 これはリメイクなんて生やさしい―――そう、そんな本当に“優しい”話ではない。
 かつてエヴァに影響を受けた人間すべてを叩きのめし、瀕死にまで追い込んだ後になお惚れ直させる暴力の化身である。

 約二時間、完全に燃え上がった。
 日陰者(オタク)で良かったとニヤついた。
 これだけのご馳走を、二度も、しかも最高の状態で楽しめる年代で良かったと吠えあげた。

 愛憎いりまじり、かつての熱も今の醜態も知っているからこその喜び。
 スタッフロールの後、あれだけ消費つくされたものを完膚無きまでに復元し超越したこの奇跡。
 スタッフの十年間がどれほどのものだったか思い知らされ、“この十年、何も成長していない”と自らの手を睨みつけた戦慄を、きっと多くの人間が味わう事になる。

 ようするに、俺たちはまたこの化け物に振り回されるのだ。
 これを幸福と言わずなんと言おう。
 これだけは若い子には経験しようのない、リアルエヴァ世代のご褒美だぜ?                  ─奈須きのこ