> 今回、地獄をどうやって表現しようかって思った時に、日本美術の研究者の人と話をする機会があったんです。その方に、日本の地獄絵図って、昔の人はどう思って描かれたんですかね? って聞いたところ、「彼らは地獄を描いているんじゃなくて、現世を描いてるんですよ」って面白いことを言われたんですよ。僕らは現世があって、地獄があると思ってるじゃないですか? ではなくて、実は現世の苦しさを描いたものが地獄なんだって。それを聞いたときに、なるほど! って膝を打つような感覚になりました。この現世が地獄だと思っている人にとってはここは地獄 だし、そう思っていない人にとってはそうじゃない。つまり、ここで描く死後の世界とか、生と死が交わる場所って言うのは、おどろおどろしいものやファンタジックに描くのではなく、むしろ現世として描くべきだって思ったんです。今このときも、世界では地獄のような紛争が起きている。それって現世にある地獄ですよね。そういうことを考えながら、ロケハンではヨルダンやイスラエルにも行きまして、そこでの人々のリアルな暮らしや、かつての歴史に触れて学んだことで、映画の中にも色濃く反映できたんだと思います。

死者の国は現世